不安や緊張を感じやすい
不安や緊張を感じやすい

不安障害とは、日常生活の中で誰もが感じる「不安」という感情が過度になり、生活に支障をきたす精神的な疾患です。本来、不安は私たちの身を守るための警報装置のような役割を果たしており、危険や緊張に備えたり、避けたりする際に必要不可欠な感情です。しかし、不安障害では、この感情が過剰に高まったり持続したりすることによって、実際には危険でない状況にまで不安や恐怖を感じるようになります。
例えば、人前で話すことや初対面の人と会話する場面で、普通の人よりも強い緊張や不安を覚え、それが原因で仕事や学業、人間関係に支障をきたすことがあります。また、不安を感じる対象や状況を過剰に避けるようになり、生活の幅が狭まってしまうことも特徴のひとつです。もし不安や心配が日常のあらゆる場面に影響を与え、行動や思考を制限していると感じたら、不安障害が疑われます。
不安障害の発症には、脳内の生物学的な要因、遺伝的な背景、個人の性格傾向、過去の経験やストレス環境など、複数の要因が複雑に絡み合っていると考えられています。
セロトニンやノルアドレナリンといった神経伝達物質のバランスが崩れると、不安を感じやすくなるとされます。
家族に不安障害の方がいる場合、発症のリスクが高まる可能性があります。
几帳面、心配性、完璧主義などの性格傾向も影響を与えることがあります。
幼少期のトラウマ、家庭環境、職場や学校での過度なストレスなども要因となり得ます。
不安障害の症状は多岐にわたり、精神的な症状と身体的な症状の両方がみられます。精神的には、強い恐怖感や心配、不安が持続し、それに伴って注意力や集中力が低下することがあります。身体的には、動悸、発汗、息苦しさ、手足の震え、めまい、吐き気などが現れることもあり、これらの症状が繰り返し起こることで、日常生活に著しい支障をきたします。
また、不安のあまり特定の状況を避けようとする「回避行動」が強くなると、社会生活や人間関係が制限され、抑うつ的な気分に陥ることもあります。
不安障害にはいくつかのタイプがあり、それぞれに特徴的な症状が見られます。代表的なものとして、社交不安障害(SAD)、全般性不安障害(GAD)、パニック障害(PD)、強迫性障害(OCD)が挙げられます。
人前で話したり注目を浴びたりするような状況で、極度の不安や緊張を感じ、「失敗して恥をかくのではないか」と強く恐れる状態です。身体的な反応としては、顔の紅潮、発汗、声の震え、動悸などがあり、次第にそうした状況を避けるようになります。その結果、学校や職場での活動に消極的になり、社会生活が著しく制限されてしまうことがあります。
毎日の生活の中で対象が定まらない漠然とした不安や心配が持続している状態です。自分に関連したことだけでなく家族に関した心配事や、戦争や自然災害に関連した不安感など自分ではコントロールできない対象への不安感が持続することが特徴です。常に不安感が高まった状態が続くことで疲労感や筋緊張が取れず慢性的な倦怠感が出現します。動悸や息苦しさ、めまい、のぼせ感、手足のしびれ、口渇、咽頭異物感などの自律神経症状が出現することもあり、日々のパフォーマンスを著しく低下させます。
前触れもなく突然激しい動悸や息苦しさ、めまい、吐き気、発汗などの身体症状が出現し、「このまま死んでしまうのではないか」という極端な恐怖に襲われる病気です。こうしたパニック発作が繰り返されることへの不安(予期不安)から、電車やバスなど人混みを避けたりするようになり、人によっては外出ができなくなるなど日常生活に大きな支障をきたします。
不合理だとわかっていてもある考えが繰り返し頭に浮かび(強迫観念)、それを打ち消すための行動(強迫行為)を何度も繰り返してしまう状態です。たとえば「手が汚れている」と何度も思い込み、頻繁に手を洗う、「鍵をかけたか不安」で何度も確認してしまうといった行動がみられます。これにより日常生活に大きな負担がかかるようになります。
このように、不安障害は症状の現れ方によって分類され、それぞれ異なる悩みを抱えています。ご自分の状態を正しく理解するためにも、正確な診断と早期の対応が非常に大切です。
不安障害の治療では、薬による症状の軽減と、心理的な支援による心の整理や対処方法の習得を組み合わせることが効果的とされています。
抗不安薬、抗うつ薬(SSRIなど)が主に用いられます。これらの薬は脳内の神経伝達物質のバランスを整える働きがあり、過剰な不安や恐怖を和らげる効果があります。
認知行動療法(CBT)が代表的で、不安を引き起こす思考パターンや行動を見直し、現実的で前向きな捉え方へと修正する手法です。段階的に克服を目指します。
不安障害は決して珍しい病気ではなく、現代社会において多くの方が悩まされている精神的な問題のひとつです。性格のせいや気の持ちようと誤解されやすいですが、適切な診断と治療を受けることで、症状は改善し、再び充実した日常生活を送ることが可能です。
当院では、患者様の不安の背景にある要因を丁寧に見極めながら、薬物療法と心理療法を組み合わせた多角的な治療を行っています。ひとりで悩まず、どうぞ安心してご相談ください。早めの受診が、心と体の健康を守る第一歩となります。
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